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マイク・シュミットは、フィラデルフィア・フィリーズ一筋で18年間プレーした三塁手。通算548本塁打、MVP3度、ゴールドグラブ10度を誇り、長打力と三塁守備を高い水準で両立させた、MLB史上でも屈指の完全型スターだった。1995年に殿堂入り。現在は自身のメラノーマ闘病の経験から、皮膚がんの予防・啓発活動に力を注いでいる。
シュミットは、最初から完成されたスターだったわけではない。初めてのフルシーズンとなった1973年、打率はわずか.196。ナ・リーグ最多の136三振を喫し、空振りと不振に苦しんだ。長打の片鱗は見せていたものの、この数字だけを見れば、のちに歴史へ名を刻む打者になるとは、誰も想像できなかっただろう。若い頃のシュミットは、失敗を恐れ、自分に高すぎる要求を課す選手だった。
転機は、深刻な打撃不振のさなかに訪れた。1976年4月17日、シカゴ・カブスとの一戦。当時のシュミットは打撃フォームに悩み、打順でも下位に落とされていた。試合前、チームメートのディック・アレンから「力を抜け。楽しめ」という趣旨の言葉をかけられる。技術ではなく、気持ちの問題だという助言だった。この日、シュミットはトニー・テイラーのバットを借りて打席に立ち、1試合で4本塁打を放つ。技術を突き詰めることよりも、重圧から解放されて野球を楽しんだことが結果につながった、人間的な転機の一日だった。
そこからのシュミットは、長打力だけの打者ではなかった。通算548本塁打は、長くナ・リーグの三塁手の頂点に立つ数字であり、最優秀選手(MVP)に3度、三塁手としてのゴールドグラブに10度輝いた。強打者でありながら、三塁の守備でも歴代最高級と評される反応と送球を見せる。打つ方でも守る方でも試合を支配できる三塁手というのは、野球の歴史を通してもごく限られている。シュミットは、その数少ない一人だった。
ただ、その道のりは順風満帆ではなかった。本拠地フィラデルフィアの厳しいファンからは、期待の大きさゆえに強い批判を浴びた時期があった。シュミット自身も完璧主義で、誰よりも自分に厳しかった。高い基準を満たせないと感じるほどに力み、かえって結果を落とすこともあった。1989年、彼はシーズン途中で現役を退く。それは肉体の衰えだけでなく、長く背負い続けた重圧による精神的な消耗も感じさせる、静かな幕引きだった。
1995年、シュミットは一度目の投票で野球殿堂入りを果たす。式典の壇上で、彼は感情を抑えきれなかった。長いキャリアの陰で、遠征やトレーニングのために家族へ大きな負担をかけ続けてきたこと。その支えがあって初めて自分の成功があったこと。彼はそれを誰よりも自覚しており、家族への感謝を言葉にした。栄光の裏側に家族の犠牲があった——シュミットの姿には、それを痛いほど理解している人間の実感がにじんでいた。
引退後のシュミットには、もう一つの大きな試練が待っていた。2013年、ステージ3のメラノーマ(悪性黒色腫)が見つかったのだ。手術で腫瘍を取り除いたが、がんはすでに転移しており、放射線治療や、強い副作用を伴う薬との闘いが続いた。最初の薬は効かず、彼は死を意識したという。流れを変えたのは免疫療法だった。治験で使った薬が効き、シュミットは一命を取り留める。この経験は、彼の人生観を変えた。現役時代の野球界には、日焼け止めを塗る文化がほとんどなかった——その反省から、シュミットは今、皮膚がんの予防と啓発に力を注いでいる。球場に日焼け止めのディスペンサーを設置する活動などを通じて、かつての自分と同じ思いをする人を一人でも減らそうとしている。失敗を恐れた若者は、楽しむことを思い出して歴史的な選手になり、重圧と完璧主義に苦しみ、家族への感謝を知り、そして今は、自分の経験を誰かを守るために使っている。
空振りや三振を消すタイプの打者ではなく、それを受け入れたうえで、四球と長打で試合を支配した。
年度別成績、契約情報、フルアーカイブ。
| 年度 | チーム | 試合 | 打数 | 得点 | 安打 | 2B | 3B | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 四球 | 三振 | 打率 | OBP | SLG | OPS |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1972 | PHI | 13 | 34 | 2 | 7 | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 5 | 15 | .206 | .325 | .294 | .619 |
| 1973 | PHI | 132 | 367 | 43 | 72 | 11 | 0 | 18 | 52 | 8 | 62 | 136 | .196 | .324 | .373 | .697 |
| 1974 | PHI | 162 | 568 | 108 | 160 | 28 | 7 | 36 | 116 | 23 | 106 | 138 | .282 | .395 | .546 | .941 |
| 1975 | PHI | 158 | 562 | 93 | 140 | 34 | 3 | 38 | 95 | 29 | 101 | 180 | .249 | .367 | .523 | .890 |
| 1976 | PHI | 160 | 584 | 112 | 153 | 31 | 4 | 38 | 107 | 14 | 100 | 149 | .262 | .376 | .524 | .900 |
| 1977 | PHI | 154 | 544 | 114 | 149 | 27 | 11 | 38 | 101 | 15 | 104 | 122 | .274 | .393 | .574 | .967 |
| 1978 | PHI | 145 | 513 | 93 | 129 | 27 | 2 | 21 | 78 | 19 | 91 | 103 | .251 | .364 | .435 | .798 |
| 1979 | PHI | 160 | 541 | 109 | 137 | 25 | 4 | 45 | 114 | 9 | 120 | 115 | .253 | .386 | .564 | .950 |
| 1980 | PHI | 150 | 548 | 104 | 157 | 25 | 8 | 48 | 121 | 12 | 89 | 119 | .286 | .380 | .624 | 1.004 |
| 1981 | PHI | 102 | 354 | 78 | 112 | 19 | 2 | 31 | 91 | 12 | 73 | 71 | .316 | .435 | .644 | 1.080 |
| 1982 | PHI | 148 | 514 | 108 | 144 | 26 | 3 | 35 | 87 | 14 | 107 | 131 | .280 | .403 | .547 | .949 |
| 1983 | PHI | 154 | 534 | 104 | 136 | 16 | 4 | 40 | 109 | 7 | 128 | 148 | .255 | .399 | .524 | .923 |
| 1984 | PHI | 151 | 528 | 93 | 146 | 23 | 3 | 36 | 106 | 5 | 92 | 116 | .277 | .383 | .536 | .919 |
| 1985 | PHI | 158 | 549 | 89 | 152 | 31 | 5 | 33 | 93 | 1 | 87 | 117 | .277 | .375 | .532 | .907 |
| 1986 | PHI | 160 | 552 | 97 | 160 | 29 | 1 | 37 | 119 | 1 | 89 | 84 | .290 | .390 | .547 | .937 |
| 1987 | PHI | 147 | 522 | 88 | 153 | 28 | 0 | 35 | 113 | 2 | 83 | 80 | .293 | .388 | .548 | .936 |
| 1988 | PHI | 108 | 390 | 52 | 97 | 21 | 2 | 12 | 62 | 3 | 49 | 42 | .249 | .337 | .405 | .742 |
| 1989 | PHI | 42 | 148 | 19 | 30 | 7 | 0 | 6 | 28 | 0 | 21 | 17 | .203 | .297 | .372 | .668 |
| 通算成績 | — | 2404 | 8352 | 1506 | 2234 | 408 | 59 | 548 | 1595 | 174 | 1507 | 1883 | .267 | .380 | .527 | .908 |
1974, 1976, 1977, 1979, 1980, 1981, 1982, 1983, 1984, 1986, 1987, 1989
| 年度 | 年俸 |
|---|---|
| 1985 | $2,130,300 |
| 1986 | $2,136,666 |
| 1987 | $2,127,333 |
| 1988 | $2,250,000 |
通算合計: $8,644,299 (4 シーズン)
シーズン平均: $2,161,075
年俸データは1985年以降が対象です。
TGNの年俸表示は基本年俸を示しています。サイニングボーナス・会計上の按分額・ラグジュアリータックス用の値は、確認できる場合に別途記載します。