ロジャー・クレメンス(ニューヨーク・ヤンキース時代)

ロジャー・クレメンス

投手 ·右打・右投 ·MLB ·1984年〜2007年 生年月日:1962年8月4日 出身:Dayton(米国)

ロジャー・クレメンス(ニューヨーク・ヤンキース時代)。写真: Keith Allison / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.0(オリジナルをトリミング・リサイズ)

MVP 1986 サイ・ヤング賞 ×7 オールスター ×11
通算
354勝 ・ 防御率3.12 ・ 4672奪三振
4916.2投球回 ・ WHIP 1.17 ・ 709登板
2007 シーズン
6勝6敗 ・ 防御率4.18
99.0投球回 ・ 68奪三振 ・ WHIP 1.31

ロジャー・クレメンスは、MLBで24年間先発マウンドに立ち続けた大投手。通算354勝・4672奪三振(歴代3位)、サイ・ヤング賞を歴代最多の7度受賞した。圧倒的な速球で知られるが、本人は「力任せに投げる投手(power thrower)ではなく、打者をどう打ち取るかを考える投手(pitcher)」であることにこだわり続けた。現在は地元テキサス・ヒューストン近郊で暮らしている。

ロジャー・クレメンスはどんな投手だったのか

ロジャー・クレメンスは、1984年から2007年まで、MLBで24年間先発マウンドに立ち続けた。通算354勝、4672奪三振(歴代3位)、そしてサイ・ヤング賞を歴代最多の7度。数字だけでも、一時代を築いた大投手だとわかる。ただ、彼を単なる「剛速球の投手」と括るのは正確ではない。強い球を持ちながら、その球をどこでどう使えば打者を打ち取れるかを、24年間ずっと考え続けた投手だった。長い年月、先発として試合そのものを支配できた背景には、球威だけではない頭脳があった。

クレメンスは近年のインタビューでも、「投球する(pitch)」ことと「ただ投げる(throw)」ことの違いを繰り返し語っている。テンポよく攻め、試合を長いイニング引っ張ることを重んじる彼は、現代のピッチクロックにも肯定的だ。現役時代は「配球のほとんどをマウンド上から自分で決めていた」と振り返り、捕手のサイン通りに全力で投げ込むだけの「パワー・スロワー」になってはいけない、と考えていた。球速そのものが投手を強くするのではない。打者の反応を読み、いつ強い球を使うかを判断する——それが「投手(pitcher)」の仕事だという思想は、彼の現役時代の投球と、現在の野球観を一本の線でつないでいる。

勝負に対する考え方も、経験に裏打ちされている。巨額の年俸を投じてスター選手を集めても、それだけで優勝が買えるわけではない——クレメンスはそう語る。単純な精神論ではなく、9月末から10月の短期決戦を何度も戦った実感だ。ポストシーズンで勝ち抜くには、試合のテンポを支配できる強い投手陣、堅い守備、そしてチーム内の人間関係の良さがいる。個々の能力の寄せ集めでは、勝ち切れない。金で選手は獲れても、勝つのはやはりチームだ、という見方である。

それでも彼は、いまの野球を悲観していない。小柄なホセ・アルトゥーベから大型のアーロン・ジャッジまで、まったく違う体格の選手が同じ舞台で一流になれること自体を、この競技の面白さとして受け止めている。そして、大谷翔平やマイク・トラウトのような傑出したスターが、ポストシーズンやワールドシリーズという大舞台に立つ姿を見たいと願う。ここでの主役は、あくまでクレメンス自身の野球観だ。強い個が、勝負の舞台でこそ輝いてほしい——彼のまなざしは、そこに向いている。

クレメンスの野球観には、球場の外での経験も影を落としている。2001年9月11日、彼はニューヨークで自身のシーズン20勝目をかけて登板する予定だった。その朝、同時多発テロが起きる。試合は延期された。のちに彼は、米軍兵士の慰問で中東を訪れ、数多くの兵士と言葉を交わす。満員の観客の前で安全に野球ができるのは、当たり前のことではない——5万人を超える人々の前でマウンドに立つことを、彼はスターの特権としてではなく、誰かが守ってくれている平和の上に成り立つ仕事として捉えるようになった。「24年間のキャリアも、あの日に起きたことの前では小さく見える」とも語っている。

歴史ある球場で投げられたことも、彼の誇りだ。とりわけ、13年間を過ごしたボストンのフェンウェイ・パークを「自分にとってのホーム」と呼び、旧ヤンキースタジアムのマウンドに立てたことにも特別な感慨を口にする。名選手たちが刻んできた歴史の続きに、自分の一球を重ねられたこと。派手な記録の裏で、彼はそうした場所への感謝を忘れていない。

ボストン、トロント、ニューヨーク、そして故郷ヒューストン——24年間、いくつもの街のユニフォームを着て投げ続けたクレメンスは、いま、育った土地の近く、ヒューストン周辺で暮らしている。世界を股にかけたキャリアの果てに残ったのは、地元テキサスへの愛着だった。圧倒的な力を持ちながら、力だけでは打者を抑えられないと考え続け、勝利は金では買えないと知り、野球ができる日常の重みを知った投手は、長い旅の最後に、始まりの場所へと帰ってきた。

選手能力レポート

MLB史上屈指のパワーピッチャー。だが、速球だけで24年間を生き残った投手ではない。

打者の反応を見ながら配球を組み立て、強い球をどこで使うかを理解していた。圧倒的な球威、長く維持した耐久性、異常なまでの競争心が最大の武器。

投球タイプ
最大の武器は威力ある速球(フォーシーム)で、歴代でも屈指のパワーを誇った。加えてスプリット系の落ちる球など変化球も高水準。強い球を軸にしながら、それだけに頼らず打者を打ち取る組み立てができた。
武器
球威と、試合への異常なまでの競争心。内角を厭わず攻め、打者を圧倒する迫力があった。速球で押し切るだけでなく、いつ強い球を使うかを考える「投手」としての判断が、その凄みを支えていた。
強み
24年・354勝を支えた耐久性。長いイニングを担い、シーズンを通して先発ローテーションの軸であり続けた。配球の主導権を自ら握り、テンポよく試合を運んだ。
制球は精密機械型ではない。四球を極端に嫌って置きにいくより、攻めながら支配するタイプで、打者に向かっていく中で結果を出した。荒れ球で自滅する投手ではないが、針の穴を通す精度が身上だったわけではない。
見どころ
「パワー・スロワーではなく投手」という本人の言葉どおり、圧倒的な力と、それをどう使うかという頭脳が同居していた。力で押す姿の裏に、打者を読む計算があった。
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詳細データ

通算記録

年度別成績、契約情報、フルアーカイブ。

年度別投球成績
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年度 チーム 防御率 試合 GS セーブ 投球回 安打 ER 与四球 奪三振 WHIP
1984 BOS 9 4 4.32 21 20 0 133.1 146 64 29 126 1.31
1985 BOS 7 5 3.29 15 15 0 98.1 83 36 37 74 1.22
1986 BOS 24 4 2.48 33 33 0 254.0 179 70 67 238 0.97
1987 BOS 20 9 2.97 36 36 0 281.2 248 93 83 256 1.18
1988 BOS 18 12 2.93 35 35 0 264.0 217 86 62 291 1.06
1989 BOS 17 11 3.13 35 35 0 253.1 215 88 93 230 1.22
1990 BOS 21 6 1.93 31 31 0 228.1 193 49 54 209 1.08
1991 BOS 18 10 2.62 35 35 0 271.1 219 79 65 241 1.05
1992 BOS 18 11 2.41 32 32 0 246.2 203 66 62 208 1.07
1993 BOS 11 14 4.46 29 29 0 191.2 175 95 67 160 1.26
1994 BOS 9 7 2.85 24 24 0 170.2 124 54 71 168 1.14
1995 BOS 10 5 4.18 23 23 0 140.0 141 65 60 132 1.44
1996 BOS 10 13 3.63 34 34 0 242.2 216 98 106 257 1.33
1997 TOR 21 7 2.05 34 34 0 264.0 204 60 68 292 1.03
1998 TOR 20 6 2.65 33 33 0 234.2 169 69 88 271 1.10
1999 NYY 14 10 4.60 30 30 0 187.2 185 96 90 163 1.47
2000 NYY 13 8 3.70 32 32 0 204.1 184 84 84 188 1.31
2001 NYY 20 3 3.51 33 33 0 220.1 205 86 72 213 1.26
2002 NYY 13 6 4.35 29 29 0 180.0 172 87 63 192 1.31
2003 NYY 17 9 3.91 33 33 0 211.2 199 92 58 190 1.21
2004 HOU 18 4 2.98 33 33 0 214.1 169 71 79 218 1.16
2005 HOU 13 8 1.87 32 32 0 211.1 151 44 62 185 1.01
2006 HOU 7 6 2.30 19 19 0 113.1 89 29 29 102 1.04
2007 NYY 6 6 4.18 18 17 0 99.0 99 46 31 68 1.31
通算成績 354 184 3.12 709 707 0 4916.2 4185 1707 1580 4672 1.17
年度別打撃成績
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年度 チーム 試合 打数 得点 安打 2B 3B 本塁打 打点 盗塁 四球 三振 打率 OBP SLG OPS
1984 BOS 21 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1985 BOS 15 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1986 BOS 33 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1987 BOS 36 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1988 BOS 35 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1989 BOS 35 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1990 BOS 31 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1991 BOS 35 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1992 BOS 32 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1993 BOS 29 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1994 BOS 24 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1995 BOS 23 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1996 BOS 34 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1.000 1.000 1.000 2.000
1997 TOR 34 2 1 1 1 0 0 0 0 1 0 .500 .667 1.000 1.667
1998 TOR 33 4 0 0 0 0 0 0 0 1 0 .000 .200 .000 .200
1999 NYY 30 4 0 0 0 0 0 0 0 0 3 .000 .000 .000 .000
2000 NYY 32 3 0 0 0 0 0 0 0 0 1 .000 .000 .000 .000
2001 NYY 33 2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 .000 .000 .000 .000
2002 NYY 29 3 1 2 1 0 0 1 0 0 1 .667 .500 1.000 1.500
2003 NYY 33 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 .000 .000 .000 .000
2004 HOU 33 72 1 12 1 0 0 7 0 3 24 .167 .200 .181 .381
2005 HOU 32 58 2 12 2 0 0 4 0 5 18 .207 .281 .241 .523
2006 HOU 19 27 0 2 1 0 0 0 0 3 11 .074 .194 .111 .305
2007 NYY 18 2 0 1 0 0 0 0 0 0 0 .500 .500 .500 1.000
通算成績 709 179 5 31 6 0 0 12 0 13 61 .173 .236 .207 .443
受賞歴・主な実績
  • All-Star Game MVP (1): 1986
  • Cy Young Award (7): 1986, 1987, 1991, 1997, 1998, 2001, 2004
  • MLB Players Choice Outstanding Pitcher (3): 1997, 1998, 2001
  • Most Valuable Player (1): 1986
  • Pitcher of the Month (15): 1984, 1986, 1986, 1988, 1990, 1991, 1991, 1992, 1992, 1997, 1997, 1998, 2000, 2001, 2004
  • Pitching Triple Crown (2): 1997, 1998
  • Player of the Week (11): 1986, 1987, 1987, 1988, 1988, 1991, 1996, 1997, 1998, 2002, 2003
  • TSN All-Star (5): 1986, 1987, 1991, 1997, 2001
  • TSN Major League Player of the Year (1): 1986
  • TSN Pitcher of the Year (5): 1986, 1991, 1997, 1998, 2001
オールスター選出

1986, 1988, 1990, 1991, 1992, 1997, 1998, 2001, 2003, 2004, 2005

年俸 / 契約 詳細

年俸・契約の要点

年度 年俸
1985$140,000
1986$340,000
1987$650,000
1988$1,350,000
1989$2,300,000
1990$2,600,000
1991$2,700,000
1992$4,705,250
1993$4,655,250
1994$5,155,250
1995$5,655,250
1996$5,500,000
1997$8,400,000
1998$8,550,000
1999$8,250,000
2000$6,350,000
2001$10,300,000
2002$10,300,000
2003$10,100,000
2004$5,000,000
2005$18,000,000

通算合計: $121,001,000 (21 シーズン)

シーズン平均: $5,761,952

年俸データは1985年以降が対象です。

TGNの年俸表示は基本年俸を示しています。サイニングボーナス・会計上の按分額・ラグジュアリータックス用の値は、確認できる場合に別途記載します。

契約詳細

よくある質問

Q. ロジャー・クレメンスの通算成績は?
A. 通算354勝・4672奪三振(歴代3位)、防御率3.12。サイ・ヤング賞を歴代最多の7度受賞し、ボストン、トロント、ニューヨーク(ヤンキース)、ヒューストンの4球団で24年間プレーした。
Q. 「パワー・スロワーではなく投手」とはどういう意味?
A. 速球を全力で投げ込むだけの投手ではなく、打者の反応を読みながら配球を組み立て、いつ強い球を使うかを考えて打ち取る投手であるべきだ、というクレメンスの投球思想。彼は現役時代、配球の多くを自らマウンド上で決めていたと語っている。
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Data: Lahman Baseball Database (CC BY-SA 4.0), Cot's Baseball Contracts, Retrosheet.