フレディ・フリーマンのドジャース移籍は、単なるFA移籍ではなかった。
ブレーブスでメジャーデビューし、長く主軸を担い、2020年にナショナルリーグMVP、2021年にワールドシリーズ制覇。アトランタのファンにとって、フリーマンは「よその球団へ移る有力選手」ではなく、球団の顔そのものだった。
それでも2022年、フリーマンはドジャースと6年1億6,200万ドルで契約した。ブレーブスとの再契約はまとまらず、優勝直後の主力一塁手はロサンゼルスへ移った。
アトランタの顔だった一塁手
フリーマンは2010年にブレーブスでメジャーデビューした。左打ちの一塁手として、長打だけでなく、打率、出塁率、二塁打の多さで打線を支えるタイプだった。
2020年にはナショナルリーグMVPを受賞。翌2021年にはブレーブスのワールドシリーズ制覇に貢献した。長く在籍した選手が、チームの中心にいて、最後に優勝まで届いた。ここまでなら、物語としてはきれいに完結していた。
しかし、優勝後の契約交渉は別の話だった。
優勝後にまとまらなかった契約
フリーマンはFAとなり、ブレーブスとの再契約が注目された。球団の顔であり、直前にワールドシリーズを勝った中心選手である以上、残留が自然に見えたからだ。
だが交渉はまとまらなかった。ブレーブスは別の一塁手を獲得し、フリーマンはドジャースへ向かった。
この時点で、アトランタのファンにとっては受け止めにくい結末だった。金額の問題だけではない。長年の象徴だった選手が、優勝直後にいなくなる。しかも、本人が明確にブレーブスを離れたがっていたようには見えなかった。そこが余計に話を大きくした。
代理人報道と、のちに撤回された誤情報
移籍後、退団の経緯をめぐる報道が過熱した。あるラジオ番組の司会者が、フリーマンの代理人ケイシー・クロースがブレーブスの最終提示を本人に伝えていなかった、という趣旨の主張を広めた。
しかしこの主張は事実ではなかった。クロース側は名誉毀損として訴訟を起こし、のちに発信者は投稿を撤回して謝罪。クロースがすべての提示を本人に正しく伝えていたことを認めた。クロースは、この誤った情報の拡散によって脅迫まで受けたと述べている。
報道されている範囲では、ブレーブスはフリーマンに複数年契約を複数回提示し、金額を引き上げていったが、最終的にまとまらなかった。そしてブレーブスは別の一塁手を獲得し、フリーマンはドジャースへ移った。
重要なのは、ここで誰か一人を悪者にすることではない。契約がまとまらなかったこと、退団の受け止め、そして後から広まって撤回された誤情報は、本来は別の話だ。ただ、アトランタの顔だった選手の終わり方だっただけに、事実と憶測が混ざり合い、話が大きくなった。
ドジャースで作り直した評価
ドジャース移籍後、フリーマンはすぐに打線の中心に入った。
彼の価値は、派手な本塁打だけではない。広角に打ち分け、二塁打を重ね、出塁し、走者を進める。強打者が並ぶドジャース打線の中で、フリーマンは打席の質を安定させる役割を持った。
2026年6月には通算2500安打に到達し、現役では唯一の2500安打到達者となった。2500安打は、3000安打を考える数字でもある。もちろん、到達は保証されない。年齢、健康、出場機会、契約状況のすべてが関わる。それでも、フリーマンは現役選手のなかで3000安打到達が注目される打者の一人になった。
2024年ワールドシリーズで変わった見え方
ドジャース移籍後のフリーマンを決定づけたのは、2024年のワールドシリーズだった。
第1戦、フリーマンはワールドシリーズ史上初のサヨナラ満塁本塁打を放った。しかも、フリーマンは足首の負傷を抱えていた。
家族の面でも、2024年は大きな出来事があった。妻のチェルシーは、息子マックスがギラン・バレー症候群と診断されたことを明かしている。フリーマンは父親としての顔も強く見せる選手だ。家族の話題は、単なる美談として消費するものではない。ただ、2024年のワールドシリーズでは、負傷、家族、移籍後の評価、大舞台での結果が一つに重なった。
最終的にフリーマンはシリーズを通じて本塁打を重ね、ワールドシリーズMVPを受賞した。ブレーブスで優勝した選手が、ドジャースでもワールドシリーズの象徴になった。これで、フリーマンの移籍後の物語ははっきり変わった。
退団の物議は、いまもフリーマンの文脈に残る
フリーマンがブレーブスを離れた経緯は、今でも簡単に一文で片づけられる話ではない。
アトランタの顔だった選手が、優勝後に残留できなかった。代理人をめぐる誤情報があり、その撤回があり、球団側の事情があり、本人の感情があり、ファンの反応があった。
そのうえで、フリーマンはドジャースで新しい評価を作った。2024年のワールドシリーズMVP、2026年の2500安打、そして3000安打への注目。ブレーブス退団の物議は、フリーマンを語るうえで消えたわけではない。ただ、ドジャースでの数年によって、それは「終わり方の問題」だけではなく、「その後に何を積み上げたか」という話にも変わっている。
フリーマンの成績、年俸、契約、通算記録は、選手ページ「フレディ・フリーマン」で確認できます。